「山岳遭難の構図」読了

青山千彰著 「山岳遭難の構図」読了
著者の青山さんは、関西大学教授であり、山岳遭難の研究者になります。
山岳遭難の研究は非常に珍しいそうですが、当時は山岳遭難については登山家の経験軸からのアプローチしかなく、科学的なアプローチの必要性を感じて山岳遭難の研究をするようになったとのことです。
山岳遭難を多数のデータから分類・解析しており非常に読み応えがありました。

面白かったので、興味のあった部分をいくつか列挙します。

①道迷いをしたときは、上に登るのが正しいのか?
著者は、必ずしも登り返しをするのが正解ではないと述べています。
山頂付近であれば、道に迷ったら登り返したほうが正しい道に戻れる可能性は否定していませんが、道迷いが山の下部であれば無理に登り返す理由はないと述べています。日本山岳協会遭難対策常任委員会では、
「だれも山行計画を知らず、救助が期待できない場合、遭難者の判断で、周辺地形を見ながら状況に応じて移動を開始する。この際、上下いずれの方向が安全であるか指導は難しい」とのこと。ただし、谷筋上の移動は上下いずれかで滝にぶつかる可能性が高い。ということが記載されているそうです。
山登りのジャンルのひとつに沢登りがありますが、沢登りの技術があって、ロープを使った懸垂などの技術があれば、山で迷ったときに谷筋、沢筋から脱出する技術がかなり高められそうですね。

②事故多発時間帯は午後二時
日帰り登山に特化したデータになりますが、事故多発時間帯は午後二時であり
登山家の間では、従来から「魔の二時」と呼ばれているそうです。
これにはいろいろな説があるのですが、著者はその理由のひとつとしてサーカディアンリズム(体内時計)を挙げています。PM2時は体温が下がり集中力が途切れる時間帯とのこと。
それ以外にも、まあ、下山でほっとしている。疲れがたまり始め、集中力が途切れる。お昼の後で消化で体の反応が鈍くなる。などいろいろな理由が考えられるそうですが、午後二時の事故が多いのは事実です。
休憩をとるタイミングとして、意図的にPM2時に休息をとり、体の疲れをリセットしてから下山するというもの有効かと思われます。

③目的地のロスト
登山のベテラン、初心者を対象にある実験をしています。
地図とコンパスを持たずに見晴らしの悪いカーブの多い登山道を歩かせると、山行経験関係なく目指す山の方向を途中で見失っていることがわかりました。
ではなぜ、遭難事故が起こらないかといえば、登山道が一本道であり、前進後退や進行方向の間違いさえなければ、方向を見失った状態でも目的地にたどり着けるからだと結論付けています。

とまあ、色々と勉強になることが書いてあるのですが、初心を恐れず、臆病なくらいの気持ちで判断をする癖をつけておくことが大切なのかと思います。

 

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