甲斐駒ヶ岳は、南アルプスの名峰。標高は2,967m。
日本百名山の著者、深田久弥氏曰く、日本十名山を選べと言われたら、甲斐駒ヶ岳は間違いなく十名山に加えられる山であると言わしめたほどの名峰中の名峰です。
また、今回登るルートは、黒戸尾根と言って、標高差が2200mと高く、前述の深田久弥氏も、「日本アルプスで一番つらいルート」と紹介しています。
実のところ、この夏休みは北アルプスへの入山を検討していました。
しかし、休みの間に仕事が入り、連続して遠出をすることが難しくなってしまいました。
山行の候補案としては他に、
①谷川岳から平標までの縦走
なども検討しておりましたが、日程、交通の便、それと初めての山に向かうワクワク感。を考慮して最終的に甲斐駒ヶ岳を選択しました。郡山を夕方出発し、大宮⇒南浦和⇒西国分寺⇒高尾⇒小渕沢に向かいます。
終電で、小渕沢駅に到着しました。時刻は0時38分。車両を降りたのは、自分の他たった4名です。登山客はいません。
道端の側溝は暗く、ヘッデンを頼りに進みます。真っ暗な中で山間を縫うように歩きますが、心細いことこの上なしです。真っ暗な山道を抜けたくて、最後はついつい小走りになってしまいました。この夜はペルセウス座流星群が最も観測しやすい夜という事で、多少期待もあったのですが、雲が空を覆い、ロマンチックな夜空は見る事が叶わず、ひたすら真っ暗な道を急いだのでした。20号線にでて、街灯の明かりに一息つきます。いやー文明の明かりは嬉しいですね!
途中セブンイレブンが一店だけあり、ここで飲み物と食べ物を調達しました。小休止をとりパンを食べ、お茶を飲んで出発しましたが、ここで、あってはならない異変が発生。
ヘッデンが故障です。ライトを点灯させると5分もしないうちに暗くなります。最初は電池が切れているのかと思いましたが、ヘッデンの光源部のライトのチルドを調整すると、また明るく光ります。どうやら接触不良のようです。
しかし、不幸中の幸いで、山間部で真っ暗にならなくて良かった。
もし山間部に入ってからランプが切れたら・・・・ヒィー(((゚Д゚)))ガタガタ
途中道の駅があったので、ここで30分ほど休憩をとりました。ここから登山口までは残り4.3キロの登りです。
ライトが消え、またヘッデンをガチャガチャ触るとライトが点灯。やがて灯りが薄くなりライトが消え、を幾度となく繰り返しながら登山口に向かいます。
(ライトに気を取られているうちに、尾白の森名水公園を通り過ぎてしまい。1キロほど余分に歩いてしまいました。)
道を歩き返して、ようやく登山口到着です。
まだ夜明け前。明るくなるまでもう少し時間を待ちましょう。
登山口です。この神社の左側から山に入れます。ヘッデンが不安定な状態だから
ちょっと、この暗さではまだ登れないかな・・・・
早く夜が明けないかな。
登山開始です。
(これは山頂でわかったことですが、前日、甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根で、熊が登山者を襲い52歳の会社員が顔などを攻撃され重傷を負ういう事故があったばかりだったそうです。知らぬが仏でした。)
山梨県ツキノワグマ出没情報
おお、だんだん周囲も明るくなってきた。

笹の平分岐に到着です。ここまで1時間。コースタイムの60%くらいで登ってきました。ちょっとペース早すぎました。ここから山頂まで7時間と標識がでています。ゆっくり登って行きましょう。
樹林帯をのんびり登ります。道すがらあちこちに信仰の名残が見られます。石仏や石碑がたくさんありますね。いつの時代のものか見てみましたがよくわかりませんでした。
北杜の深い森が広がっていて、高さを感じない風景ですね。
穏やかでなんだか、近くの公園を散歩している感覚です。

このルートはトレイルランでも有名なコースです。NHKの日本百名山でも紹介されていましたが、あの山本健一さんも、このコースが大好きで練習にきているとか?
もしかして土曜日だし出会えないかな?と期待しましたが、残念ながらお会いすることはできませんでした。(^ ^)
標高2049mの刀利天狗までは、樹林帯の中をひたすら登ります。
ただ、森の朝の空気がしっとりとしていて、素晴らしくいい気分です。
石仏に一礼して前に進みます。
光と影の山道をゆっくり踏みしめて登ります。鳥のさえずりが聞こえます。少し日も射してきましたね。
あまりにもしっかりした森なので、なんだか逆に作り物っぽくて、ディズニーワールドの中を歩いているみたいな変な錯覚を覚えました。
本当素晴らしい森ですね~。
ずっと、日本庭園が続いているようなところもありました。
とても高山とは思えない景色です。
ここが刃渡り。鎖も足場もしっかりしています。
ただし、高度感はあまりありませんでした。

そうこうしているうちに、七丈小屋到着。
カレーを食べたいと思っていましたが、小屋番さん不在です。
ドアを開けると、草刈に行っています。の看板がありました。
しばらくここで休憩をとります。
まずは、水代100円を入れて、お水をもらいます。
これこそ、南アルプスの本当の天然水ですね。おいしい~。
汗をかいた分の塩分を取り戻せましたね。ちなみに小屋番さんはけっきょく戻ってきませんでした。(奥のもう一つの小屋でトイレ掃除などをされてたみたいです。)

おお、甲斐駒タオルだ!Tシャツだったら買ったんだけどな~。
ビールも売ってるな?冷えてないビールだといやだな~。
小屋でたっぷり1時間30分ほど休憩しました。
ザックの重さと暑さにうんざりしてましたが、おいしいお水となめこ汁。ご飯はお赤飯。
締めにコーヒーでようやく元気を取り戻せました。

七丈小屋から山頂までは約2時間。岩稜帯が続きます。
石の鳥居が崩壊してました。地震?お天気は、ここからものすごく良くなってきました。顔も腕も、相当焼けている感覚です。
ここから鎖のオンパレードです。
山頂かっこいい!
写真で見たことがある剣ですね。
岩がせめぎ合っています。山頂間近になると風景が一変しました。
岩と岩の向こうは・・・・ものすごい高度感。
(写真はガスですが・・・)
本社に一礼します。山頂はかなりの人がいました。
ガスガスでしたが、一瞬空の雲が切れて青空が顔をのぞかせてくれました。
ヤッホー!(と心の中でひとり呟きます。)
雲が湧きあがり、ガスガスの風景でしたが、風が流れる瞬間、素晴らしい風景を楽しむことができました。
黒戸尾根は日本三大急登ばかりが喧伝されますが、途中の北杜の森の素晴らしさをもっと広めるべきでしょう。
深い深い森の奥に進みながら、頂きを目指す。そのうちに風景と自分が一体になれるような感慨をもたらしてくれる、甲斐駒ヶ岳は、そんなロマンチックな山でした。
ありがとう甲斐駒ケ岳。今度は、快晴の日に会いましょう。
でもって・・・その日は下山して八王子までもどりビジネスホテルにチェックイン。
近くのビアホールで、一人祝勝会と反省会をしました。
下山後の最初の一杯のビールのおいしいこと!くーっ(*゚▽゚)ノ
徹夜登山、真夜中の真っ暗なロードの緊張感。往復のロードを含めると30キロの行程。加えて黒戸尾根の効果と甲斐駒の風景の感動。これらがミックスされて、その晩は気持ちの良い深い眠りに落ちていったのでした。(^ ^)